公益財団法人特別区協議会より、平成29年度『特別区政研究』への出席のご依頼があり、当法人の小又理事長と、路上生活者自立支援センター目黒寮の大竹施設長が、話者として参加させていただきました。オフィシャルには『調査研究報告書』として発表されます。


(写真 左:小又理事長 右:大竹施設長)

【講話内容】

日 時:平成29年7月13日(木)
会 場:東京区政会館 特別区協議会 会議室
テーマ:路上生活者問題都区検討会
手 法:オーラルヒストリー(※1)
内 容:施設を受託する実務的立場から
対 象:東京大学公共政策大学院 金井 利之 教授
同校 科目「事例研究 現代行政Ⅲ 特別区政」 参加学生
公益財団法人特別区協議会
特別区人事・厚生事務組合

(※1)関係者から直接話を聞取り、記録しまとめる手法。文献・資料では公表された結果のみで、決定に至る経緯、過程が残らないため、当時の関係者にインタビューを行う事で文献では取得しにくい情報を知ることができる。

【経緯】

今年度の特別区政研究(全12回)は、東京都、23区(特別区)、当時の各責任者、路上生活者を多く抱える区、東京都と区の狭間での特別区人事・厚生事務組合(以下、特人厚)としての立場などを当時の担当者からヒアリングを行い、残存する資料や記録では取得することのできない“行間”を読み解いてきました。今回が最終回ということもあり、『施設を受託する実務的立場』から当法人にご依頼をいただき、参加することとなりました。

当法人は、ホームページの沿革(http://yurin.org/history.html)をご覧になられると一目瞭然ですが、設立時から現在に至り、『戦後の貧困対策』『生活困窮対策』『山谷対策』『保護施設』『路上生活者対策』『ホームレス対策』『公園対策』『生活困窮者自立支援』などと呼ばれる事業を、時代の変化と共に形を変えながら、半世紀以上取り組みを行ってまいりました。

今回は、その中の東京都と特別区の共同事業である『路上生活者対策事業』の『暫定自立支援センター』『自立支援センター』『緊急一時保護センター(巡回相談センター併設)』『新型自立支援センター』を受託してきた社会福祉法人の視点でのヒアリングとなりました。

【話者の法人内での経歴】

小又理事長は、現場に従事した後、冬季臨時宿泊施設さくら寮施設長、暫定自立支援センターさくら寮施設長、そして、平成12年11月開設の自立支援センター新宿寮施設長、平成16年開設の自立支援センター渋谷寮施設長、平成21年開設の自立支援センター品川寮施設長として従事し、平成22年10月からは当法人の理事長を務めております。
大竹施設長は、小又理事長の下で自立支援センターの生活指導員として従事し、平成22年10月からは小又理事長の後任として、自立支援センター品川寮施設長として従事し、現在は平成26年開設の自立支援センター目黒寮施設長を務めています。

【所感】

振り返れば、東京都特別区における路上生活者対策事業は、「試行錯誤」「手探り」「手づくり」の状態であったと言えます。また、それは今も継続中です。現場である行政、受託法人、施設職員、地域の協力、そして何よりも利用当事者、この時代を一緒に生きる者としての創意工夫がそこにはあります。

また、現在の福祉業界は「地域共生社会」「地域包括ケア」「地域力」など、その言葉の通り、基礎自治体である区市町村ベースでの『地域』に比重が置かれています。
それでは、「ホームレス」と呼称される状態の方々は、「地域」のどこに属しているのでしょうか。そして、「ホームレス」という状態は、はたしてどのような状態を指し示しているのでしょうか。
家がないだけなら表現上「ハウスレス」という言葉になり、公園や河川で起居されている方は「路上生活」という言葉になるでしょう。
長年の経験から「ホームレス」という「状態」を表す言葉が意味するものは『居場所の喪失状態』であると、考えています。「家庭」や「学校・会社」などの『居場所』を失うという事は、『孤立』や『孤独』となり、その状態は著しく人を疲弊させていきます。
この状態を「回復」させるためには、やはり「人」の力が必要となります。

当法人の理念である『徳は孤ならず、必ず隣あり』人はひとりで生きていくものではなく喜び悲しみを分かち合いながら共に助け合って生きるものである。という戦後間もない設立時からの意思は、今もなお我々法人職員に強く問われ、「路上生活者対策」「生活困窮者対策」という制度上の区分だけでなく、『この時代を共に生きる者同士』としての共通課題を、関係機関と連携をしながら、社会福祉法人有隣協会ならではの創意工夫で立ち向かっていきたいと考えております。